
多くの昆虫は幼虫からサナギになる時に幼虫時代の皮を脱ぎますが、ヒラタアブなどは幼虫時代の皮を形を整えながら厚くして殻のようなものを作ります。そして、その殻の中で体の組織を溶かしてサナギの皮とサナギ自身が作られていきます。
この殻のようなものはサナギの皮の外側にあることになるので、蛹を囲む「囲蛹(いよう)」と呼ばれています。

寄生された蛾のサナギから寄生バエの白い幼虫がポロリと出てくることがありますが、あの幼虫も出てきてすぐに同じように厚い殻のようなものを作り・・・というか、自身が殻になってその中でサナギになるわけです。
羽化の時期になって出てくるときには、まずサナギの皮を破りさらに硬い囲蛹を破る必要があるわけですな。
皮を脱いだり脱がなかったりといった違いがなぜあるのかですが、理由はわかりませんw
ただ、皮を脱ぐ場合は、幼虫時代の終盤に体内でサナギの皮をある程度作っておく必要があると思います。そしてサナギになる前に移行準備期間のようなものが必要になります。終盤の幼虫がやや動きが緩慢になったり前蛹になったりするのは、そのためかもしれません。
幼虫時代の薄い皮の中でこれらすべてをやることになり、ある意味繊細かつ脆弱とも言えます。
一方、皮を脱がなくて囲蛹を作る場合は、サナギの皮の生成は囲蛹になってからでも遅くはなく、幼虫時代は「食べて大きくなる」という目的に集中できます。ヒラタアブ系は葉ではなくアブラムシを食べ、それもアリの攻撃を避けながらですので、食べるのをやめるまで敏捷性があったほうがいいのかもしれません。
また、サナギの皮というものは意外と薄いものなので、囲蛹のような硬い殻で包まれていると外部からの攻撃に耐える度合いも変わってくるのかもしれません。
まあすべてはあくまでも推測ですが、進化は環境に応じるように行われることもあるので、こうなる理由が幼虫時代の生育環境に隠れているのかもしれません。